第二十五回 最前線の現場
「築地を世界に売りに行く」という象徴的キーワード。
そこからの思考回路はシンプルであった。
まずは誰がどのように売りに行くのかという点である。
2016年から2018年にかけて「築地を世界に売りに行く」を基軸として、海外向けを得意とする商社や現地流通業者と会話する機会を多く設けた。
先に共有しておくと、結論は「自分が直接売りに行く」、それが最善の解答であると判断した。
だから、2021年いまカナダという地に自分が存在している。では、そう判断した基準や材料含めて、もう少し紐解いてみたいと思う。
2016年アラスカ出張後、次は貝類買付とサバ・赤魚の加工視察で中国出張が決まった。
場所は大連から車で三時間くらいの丹東市である。
下記の地図通りであるが、北朝鮮と隣接するエリアだ。
日本人からすると近くて遠い国である北朝鮮が川を挟んで、向こう岸に見えている。
しかも川といっても黄河のような大河でもなく、むしろ岸から岸へ「おーい!」と声を掛けたら、「おーい!」と返事が返ってきそうな距離感であった。
貝類買付において認識を確実にしておく重要事項は、中国産アサリは日本向けに輸出できるが北朝鮮産アサリは輸出出来ないことだ。
ただ、先述のように漁獲海域は非常に隣接しており、その線引きを厳格に行うことが求められる。
北朝鮮産は中国産に比べて安価な為、黙っていたら中国加工業者は混獲を理由として悪いことをしてくる。
その水際での防衛線を視察することが出来た。
そして、これが現地駐在員の求められる資質であり、厳しい現実なのだと感じることも出来た。