第三十三回 逆さにした時、見える絵は何か?
「海域」「地理」とキーワードを説明してきたが、最後の「文化」については理解しやすい観点であろう。
やはり日本食の特徴としては「生食」、特に魚における生食である。
その生食文化がある程度浸透し、文化が発展しつつあるエリアでは人種的な多様性が大きくなる。
その点において、バンクーバーという地はファーストネーション(先住民系)・白人をベースに、中国・韓国・日本・インド等、文化を受け入れる土俵が整っている地域であった。
また、19,20世紀には日本からの漁師移住者も多く、現地漁師への指導も進んだ。
イクラ・数の子など、今となっては高級食材ではあるが、そもそも魚肉のみを食していた現地の人々からすると廃棄が当たり前であった。
そういった「勿体ない」をお金に換える仕組みをつくり、教え伝えた功績もあり、日本人漁業者へのリスペクトはいまでも少なからず続いている。
これまで学んできた魚種が生息する太平洋海域において、生態系の豊かな地理的構成を持ち、文化の融合と歴史が後押しするエリア、それがカナダでありバンクーバーであった。
さて、海域・地理・文化と3要素について解説を進め、この「日本を世界に売りに行く」プロジェクトにおいても、大枠が決まってきた。
あとは、実際に家族を持つ身として、どのように日本からカナダへ行くかというスキームを考える段階に入った。
まずは少し基本的な部分を抑えたい。
「日本人が海外で働く」というプロセスを考える中で、まずは課題となるのは労働許可(ワークパーミット)をどう確保するかである。
皆さんもワーキングホリデーという言葉を聞いたことがあるかもしれないが、制度上の年齢制限や期間制限もあり、今回のようなプロジェクトを自主的に進めるという形式には向かない。
ワーキングホリデーはあくまで、他社企業に雇用してもらうと図式が前提である。
ではどうする形であれば、カナダという異国においてビジネスを組み立てることが出来るのか?結構これは頭を悩ませる課題であり、その突破口を見つける為に色々な資料を読み漁る。
では私がどうしたのか、結論を先に言っておこう。
「日本国籍の企業がカナダに現地法人を創設する」という絵を描き、「そこの代表権を持つ人間として配属される」という形を作る。
これが突破口だった。
さらっと書いたが結構すごいことであり、内容としては簡単だが、具現化するには各点抑えなければならないプロセスが発生する。
もう少し解説を深めよう。