第五回  2つ目の出会い

幅広い専攻をする過程で、彼が一番興味を持った分野は「漁業学」であった。

そして、ここでの視座が彼にとっての3つ目の出会いを創る。

1つ目の出会いである「ネンブツダイ」、2つ目の出会いである「漁業学」となるが、この広きに渡る漁業分野において彼は「定置網漁業」を専攻した。

定置網漁業とは数ある漁法の中でも極めて歴史の古い手法の一つで、沿岸域に設置し、海流や海底起伏を加味しながら、魚を受動的に誘導・漁獲するというものである。

トロール網等の魚を追い回す漁法とは異なり、魚が泳いでくるのをただただ待つという非効率な漁法が故、持続的生産が可能な手法だ。

 

春はタイ類・メバル、夏にはカツオ・アジ等、季節に応じた魚が様々漁獲される。と同時に商業的価値のない魚や網揚げ時に傷の付く魚なども生じてしまう。

これを肥料等にするのであればまだしも、海洋投棄してしまうケースも多く見受けられる。やはり船倉には限りがある為、より高く売れるものが優先される。

こういった投棄される魚を「投棄魚」といい、その割合を「投棄率」と表現する。

一操業当たりの投棄率をどうしたら減らすことが出来るのかという研究を彼は専攻していた。

極めて専門的であり、かつ非常に大切な事だと感じていた。

 

捨てられる=どういう事だろうか・・彼は調査の中で投棄魚サンプルを収集し、分析していった。

その結果、投棄魚の割合は漁獲量の2-12%で、基本的には食べられるのに捨てられている魚がほとんどという事が分かってきた。

どうすれば、こういう不遇な魚たちを減らすことが出来るのだろうか。

毎週のように都内から伊豆半島まで通い、漁師と苦楽を共にし、暑い日も寒い日も漁に同行、彼の地道な研究は進んでいった。