第九回  自信喪失

「何が違うんだろう。どこを見てるんだろう。」彼の疑問に上司はただひたすら、行動のみでしか教えようとしなかった。

「俺の魚を見ろ」そういう強い雰囲気だけが伝わってきていた。

 

朝0時半出社の生活が続き、1年半が経とうとしていた。

ここでまた一つの事件が起こる。

その日、彼はいつも通りに18時には寝支度を済ませて、ベッドに横になった。

その時だった・・目の前がグルグル回り、見上げる天井が歪んで見えた。

尋常ではない眩暈と同時に、強い吐き気に襲われる。

六畳一間の独身寮には共用スペースにしか流し台がない。

ベッドから這い上がり、歩き出すものの強烈な眩暈と吐き気が続き、そのまま部屋の真ん中で倒れ込んでしまった。

 

このままでは気絶してしまう・・薄れゆく意思の中で携帯に手を伸ばす。

画面を見ることもままならない状態で119番をコールした。

最後の力を振り絞り、状況と所在地を伝え、いよいよ意識を失った。

何時間経ったのだろうか・・気が付けば、「聖路加国際病院」の病室にいた。

眩暈は少し改善したものの、とても歩行出来るレベルではなく、そこから寝たきりの生活が始まる。

食事を摂ることも、トイレ・お風呂に至っても人の力を借りずして出来なくなってしまった。

深い絶望と強い自己嫌悪に襲われる。言葉を敢えて選ばないとすれば、「もう俺は障害者なのか・・・」そんな気持ちでしかなかった。