第二十四回 見えている事と見えていない事
生物多様性を理解し、未利用資源を活用し、地場に貢献出来るような仕組みを現地(海外拠点)に構築する。
「築地を世界に売りに行く」という姿勢は、その成果物(水産物そのものや水産物加工品)を販売するという事に限らず、日本が持つ食への「考え方」や「文化」を包括した切り口で進めていく事が良いのではないだろうか。
現方針の基礎となる考え方が、この2016年アラスカ出張を経て構築されていった。
2014年に長女海里が誕生し、家族という意味をより深く考えるようになる中で、仕事も順調に拡大を重ねた。
2016年には先述したアラスカ・カナダへの鮭鱒類買付視察や中国への加工工場視察等、これまでの築地セリ人としての範疇を越え、新たな領域へと舵を切る事になった。
そして、同じく2016年には長男航也が誕生する。しかし海外への視野が広がり、業務対象も海外となってくれば、家を不在にせざるを得ない状況も増えてくる。
そんな時間が増えれば、家族と過ごす時間が減る。
「何の為の結婚、何の為の家族なのだろうか?」彼の中でまた一つ「人生の歩み方」という点において、一つの疑問が生じていた。
そうした中、自然発生した「築地を世界に売りに行く」という象徴的キーワード。
そこからの思考回路はシンプルであった。
まずは誰がどのように売りに行くのかという点である。
2016年から2018年にかけて「築地を世界に売りに行く」を基軸として、海外向けを得意とする商社や現地流通業者と会話する機会を多く設けた。
先に共有しておくと、結論は「自分が直接売りに行く」、それが最善の解答であると判断した。
だから、2021年いまカナダという地に自分が存在している。
では、そう判断した基準や材料含めて、もう少し紐解いてみたいと思う。