第二十六回 得られるものは利益だけではない

貝類買付において難しいことは、中国産アサリは日本向けに輸出できるが北朝鮮産アサリは輸出出来ないことだ。

ただ、先述のように漁獲海域は非常に隣接しており、その線引きを厳格に行うことが求められる。

北朝鮮産は中国産に比べて安価な為、黙っていたら中国加工業者は混獲を理由として悪いことをしてくる。

その水際での防衛線を視察することが出来た。

そして、これが現地駐在員の求められる資質であり、厳しい現実なのだと感じることも出来た。

 

帰国後、会社より求められていた通常業務(イクラ・貝類などの買付販売業務)と並行して、貿易会社や水産商社、また各国大使館や公的機関との接点を深めていった。

振り返ってみても、会社業務に直接関与するような相手先などではない為、上司からしたら「疋田は誰とミーティングしているんだ?」となるような事も多かったかもしれないが、そこは実績を残していたこともあり、かなり大目に見ていてくれたような気もする。

 

まずは商社に目を向けた。

三菱商事など大企業との連携は会社規模としても難しいかもしれないが、それ以上にもう少し水産もしくは食品に特化した企業との関係性を深めることに考えを進めていた。

その中でも、JFC(キッコーマン子会社で世界に調味料販売をしている)は醤油と魚といった親和性も良いと考え、最初に連絡を取ってみた先であった。

運よく大使館交流会にて知り合った方が中繋ぎをして下さり、東京本社の部長とお話しを出来る機会を設けることが出来た。

こういった関係性の副産物(大使館交流会で直接的には売上や利益に繋がらないが、結果として機略縦横の働きをする)が帰国後の活動を通じて多く見受けられた。

一社ずつの議事内容は掲載することは出来ないが、結論として「世界に築地を自分が売りに行く」という考えに至る、上記JFCとのミーティングはもう少し深堀して続けておこう。