第三十二回 美味しい魚は美味しい餌を食べる

太平洋産の魚種において、バンクーバーやシアトル、サンフランシスコ、ロサンゼルスといった北米海域の優位性は高い。

翻って、南アメリカに関してはペルー・チリ等の海域も魅力的な部分は多いが、治安面や距離、つまり「日本との距離」を指すが、それを視野に入れると課題感が生じる。

補足として、太平洋魚種として説明した内容に関してだが、自分が詳しいのは太平洋の中でも「北半球海域」に限定される。

やはり南半球には南半球の独自生態系が存在し、「知識の互換性」は東の日本と西の北米よりは低いと見積もった。

 

次に2つ目の地理に関してお伝えしたい。

上記にもあるが、日本との距離は考慮すべきポイントである。

産地から消費地へ運ぶ、最近ではフードマイレージとも呼ばれるが、まずは可能な限り産地と消費地は近いことに越したことはない。

そうなると、北半球の太平洋海域という点では、ハワイやオセアニア州の島嶼国も候補に挙がってくるのが自然な選択肢である。

実は出張を通じて、産地としての可能性を感じたことは多いが、やはり高低差が少ない。

高低差とは何のか?つまり山地と平地だ。

山があると、雨により川ができる。

川が山の栄養分を含んだ有機水を運び、それが河口域を豊かにする。

豊かな海は豊かな生態系を育む。

魚の美味しさは、その魚が何を食べているかに由来する。

これについては、もう少し解説を深めていきたい。

 

魚の食性について考える時に、人が食べても美味しい物を食べている魚は一般的に美味しいと表現できる。

例えば、ゴカイやイソメなどを食べているカレイ類より、魚やカニを食べているヒラメの方が濃い味の印象を受ける。

そういった感じで、同じハタ類であっても太平洋のど真ん中の海域にはあまり甲殻類が生息していない為、食味としては若干物足りなく、逆にカナダなどの沿岸域のハタ類は豊富なエビ・カニ・ウニを捕食しており、美味しさが凝縮されている印象を受けた。

全魚種でこのような比較対象をしたわけではない為、100%の統計は取れていないが、理由付けとしては整合性があると思う。