第二十回 過去の成功体験は現在の失敗要因
プレイヤーとしては優秀であったかもしれないが、マネージャーとしては優秀ではない。
彼の所属する会社もこれに漏れず、そういった悪社内環境が多発していた。
加えて、市場へ期待される機能性も時代により変化してきた。
そもそもの市場機能は3点である。
「物を集める=集荷」、「物を分ける=分荷」、「値段を決める=定荷(定価)」だ。
そして、これに対して適した販売方法がセリや入札であった。
市場の歴史を振り返れば、昭和・大正・明治よりも前までにも遡る。
単純に買い手・売り手を繋げるという点を考えた場合、一つの地域で多くの種類を売買出来る方が便利である。
しかし、そうした場所が無秩序に乱立すれば街や生活にも大きく影響を及ぼすことになる為、市場という名目において機能性を記した法整備していくことになる。
その集大成・象徴というべきものが築地市場(現・豊洲市場)などの中央市場であった。
市場では需要供給のバランスによる適正数量や適性価格が導き出され、そうした意味合いよりセリ販売が用いられるようになった。
しかし、前回でも多少お伝えしていたが、産地直送やメーカー直送が増える中で、セリ販売での割合が大きく低下し、直接販売(セリに対して相対と表現する)が増加、そのような影響もあり市場機能が「販売拠点」から「物流拠点」へと変化していった。
以前のように買い手がプロであれば、売り手もプロである必要性があったが、単純な物流拠点という事であれば求められる資質も変化し、「目利き」を必要としない構造に変化が進んだ。
市場における最大の価値であった「目利き」が必要でなくなるという事であれば、根底より事業方向性や事業価値を見つめ直すことが必要になるはずであるが、そうは変化しない事が世の常である。彼の所属する会社もその波に乗り遅れていた。
次節にも続く内容ではあるが、少し触れておく。
さて、役割が「物流拠点」となった市場には何が求められるだろうか?
「物流拠点」となれば、どうなるだろうか?
答えは簡単である。
買い手としては「1円でも安く、1秒でも早く、その場を通過して欲しい」という事だ。
ここで少し市場での物流とそれに関係する利益構造について共有しておこう。
可視化した方が理解しやすいかと思われるので、以下をご覧頂きたい。