第二十三回 最初が最後

アラスカでの主要産地を視察すること数十か所。

車やセスナの移動を重ね、色々なことが見えてきた。

そして、サケ魚種中心の漁獲=主要収益をサケ事業で賄っている経営方針の企業がほとんどで生態系多様性をほとんど視野に入れていないと感じた。

サケが居る海には勿論サケ以外も生息しているだろう。

何か面白いことは出来ないであろうか。

何か商機を感じる。

わくわくが止まらなかった。

 

「築地を世界に売りに行く」そういう気持ちにさせたアラスカ出張であった。

帰国後、出張レポートをまとめる中で、「海外の可能性」と同時に「自分たちの日々働く場所のレベルの高さ」に改めて気が付かされる。

それは漁師からはじまるフードチェーンがしっかり整備されている事である。

これを可能にする為には、やはり単一民族国家であるということが一つ大きいのだろうと推察できる。

魚に携わる皆が「生食をする」ということを前提に、全流通段階での確実な配慮がなされている。

特に鮮度に一番影響を与えるスタート地点は、「漁場」「漁師」での取り扱いだ。

最初が悪ければ、いくら良い設備や処理を施したところで鮮度が戻る事はない。

当たり前のことだが、このスタート地点での鮮度管理が全てを決めるという事実を安く見積もってはいけないという事だ。

 

生物多様性を理解し、未利用資源を活用し、地場に貢献出来るような仕組みを現地(海外拠点)に構築する。

「築地を世界に売りに行く」という姿勢は、その成果物(水産物そのものや水産物加工品)を販売するという事に限らず、日本が持つ食への「考え方」や「文化」を包括した切り口で進めていく事が良いのではないだろうか。

現方針の基礎となる考え方が、このアラスカ出張を経て構築されていった。