第七回  自分軸

「全ては漁獲時に決まっている」ということだ。

言い換えるならば、「魚は現場での取り扱いで、その後の品質が全て決まってしまう」ということであり、鮮度に対してどれだけ注視出来るかが着荷状態を大きく変える。

彼は、自らの視座を「現場」に置く意味を「強み・差別化」へと将来活用していくことになる。

 

大学での「投棄魚」に関する研究を経て、彼は就職活動を始める時期になった。

自分の趣味、親の仕事なども含めて、彼は「自動車業界」「不動産業界」「水産業界」に絞っていた。

今にも続く彼の気質として、「こだわりが強い」「自分の納得した物を売りたい」「自分の納得した事をしたい」という考え方を持っていた。

就職活動を通じて、多くの事を理解・学習していった。

そして、「会社の看板ではなく、個としての市場価値を高める」という重要性に気が付いていく。

ここまで就職活動を精力的に動いた学生はあまりいないのではないだろうか。

訪問社数115社、インターンシップ5社、大手から中小まであらゆる角度から業界を見てみたかった。

その結果、三菱商事など大手からも合格内定を受けた。

そこでも彼はニッチ路線・個人力を高める進路を選び、かつ水産業界で生きていく進路を選択した。

 

「大きな商社や大きな水産会社に入社すれば将来的には安定するかもしれない。ただ、そこでは歯車的な役目しか果たせないのではないか。例えば、マグロならマグロ、エビならエビだけのプロ、このシーズンにはこれが美味しいからというような季節性を取り入れると等の柔軟性はなく、商品の深堀りと採算性を強く求められてしまう。一方で生態系は全てが関係し合い成り立っている。一魚種を選択集中的に漁獲すれば、資源は枯渇し、その余波が別魚種にも影響する。それを防ぐ為にも、シーズンを通じて色々な魚種を獲ることで生態系に対する配慮と持続性を促すことが可能になる。」という持論を鑑みて、彼は市場という魚の原点のような場所で働くことを選択したのだ。