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第十回 起死回生
深い絶望と強い自己嫌悪に襲われる。 言葉を敢えて選ばないとすれば、「もう俺は障害者なのか・・・」そんな気持ちでしかなかった。 「右内耳層破裂症」、三半規管の障害により、平行感覚が麻痺し眩暈・頭痛・耳鳴りを引…
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第九回 自信喪失
「何が違うんだろう。どこを見てるんだろう。」彼の疑問に上司はただひたすら、行動のみでしか教えようとしなかった。 「俺の魚を見ろ」そういう強い雰囲気だけが伝わってきていた。 朝0時半出社の生活が続き、1年半が…
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第八回 現場力
彼は、自らの視座を「現場」に置く意味を「強み・差別化」へと将来活用していくことになる。 毎週の漁業研究において、彼は現場というものの重要性・変動性・非効率性に気が付き、現場での意味合いをより深く考えるようになった。 &n…
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第七回 自分軸
「全ては漁獲時に決まっている」ということだ。 言い換えるならば、「魚は現場での取り扱いで、その後の品質が全て決まってしまう」ということであり、鮮度に対してどれだけ注視出来るかが着荷状態を大きく変える。 彼は、自らの視座を…
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第六回 3つ目の出会い
漁獲1回に対して、食べられるのに捨てられている魚が予想以上にいる。 どうすれば、こういう不遇な魚たちを減らすことが出来るのだろうか。 毎週のように都内から伊豆半島まで通い、漁師と苦楽を共にし、暑い日も寒い日も漁に同行、彼…
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第五回 2つ目の出会い
幅広い専攻をする過程で、彼が一番興味を持った分野は「漁業学」であった。 そして、ここでの視座が彼にとっての3つ目の出会いを創る。 1つ目の出会いである「ネンブツダイ」、2つ目の出会いである「漁業学」となるが、この広きに渡…
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第四回 学びの方向
時は進み、彼は東京渋谷にある都立広尾高校・普通科に入学する。 高校1年に「小型船舶操縦士4級」、次いで高校3年「小型船舶操縦士1級」を取得する。 共に最年少枠での合格となった。 大学進学にあたり、彼は迷うこ…
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第三回 命との接し方
「新鮮な魚は臭くない」その短い言葉は彼の中に長く留まり続ける。 弱冠5歳、こうして今に続く“”疋田拓也“”としての原型が形成された。 「おいしいいー!!」魚を食べて、初めて感じた気持ちだ。 魚ってこんなに美…
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第二回 運命の一匹
この日が人生にとって大きな転機になるとは、彼も含めて誰も知らなかった。 しかし、振り返ってみれば「疋田拓也」としての人生を決めたのは紛れもなく、初めて釣った1匹の「ネンブツダイ」だった。 「おお!釣れてる!…
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第一回 魚の疋田拓也が誕生した日
1989年、私は父親の出身地である静岡県沼津市に遊びに来た。 駿河湾という恵まれた海が一面に広がる立地に、私は幼いながらに興奮していた。 今日、人生初めての魚釣りをする。 振り返…